「世界のどこでも指導ができる指導者になっていたい」
――2013年から始まったNWSLですが、アメリカは長く世界でNo.1ですからね。
「そのアメリカの強さの理由も探りたいと思っています。フィジカル、スピードなどがアメリカの長所ですが、僕らは外から見るアメリカしか知らない。
それを中から見て、選手の取り組む姿勢、サッカー観、価値観を知った上だと、アメリカの強さの意味を理解できるチャンスがあると思うんです。僕はフィジカルに頼るサッカーより、技術を重視していますが、フィジカルの強さがアメリカの強さ。それはリスペクトしたいと思っているんです。
僕はまずアメリカのサッカーを学びに行く立場ですが、当然INACがやっていたようなポゼッションサッカーを、身体能力が高いアメリカの選手がどこまでできるのかも、いつかチャレンジしてみたいと思います。その一方で、アメリカで指導したら、縦に速いサッカーの方がいいという結論が出るかもしれない」
――これは男女共通の話ですが、日本サッカー発展のためには選手に加え、指導者のレベルアップも欠かせません。
「僕は来年のこの時期までに、ワールドスタンダードな指導者、つまり世界のどこでも指導ができる指導者になっていたい。それには苦労も多いはずです。INACで1年監督をやらせてもらったことで自信がついた部分もあるけど、まだまだだと自分では思っています。
僕は『INACファミリー』という言葉をよく使っていました。INACに関わるみんなで優勝しようと1年間取り組んだ結果、4冠という最高の結果を得ました。そのように、2020年の東京五輪は女子サッカーに関わるみんなで戦えたらと夢見ています。
全国の指導者や女子サッカー部員も、みんなが『なでしこジャパンは家族なんだ』と思えるような空気感を作りたい。そうすれば東京五輪は絶対に盛り上がる。みんなが親戚の試合を見にいくように、女子サッカーの試合を見に行ってほしい。
僕自身がアメリカで指導して終わりじゃなくて、日本に戻る時には、世界トップクラスの選手が集まってプレーできる環境作りから着手したいと考えています。そのためなら、数え切れないほどの苦労をたくさんしていく覚悟です」
【了】
プロフィール
石原 孝尚(イシハラ タカヨシ)
1977年4月8日、愛知県生まれ。日本サッカー協会公認 A級ライセンス取得。2000年に金沢大学を卒業、2003年に筑波大学大学院体育研究科修士課程修了。2003年から前橋育英高校、帝京高校、吉備国際大学(いずれも男子)のコーチを務め、2011年に監督就任。2012年からINACのヘッドコーチ兼U-18監督となり、監督に昇格した2013年は、選手の個性を見極めた上での采配・指導で、史上初の4冠を達成した。2014年1月をもってINACを退団し、アメリカ・カナダ・メキシコ女子代表が所属するスカイブルーのコーチ就任が発表された。