「十代前半の少年で最も気をつけなければならないのは親よ」
――貧困の中に埋もれて生活し続けるか、フッチボールをするか、ぼくには二つの選択肢しかなかったんだよ。
ブラジルのサッカー選手からこれまで何度この言葉を聞いてきたことだろうか。
もちろん、古くはソクラテス、最近ではカカのような中産階級以上出身選手は存在している。しかし、その数は限られている。経済発展が進んだとはいえ、ブラジルでは未だに多くの人間が貧困の泥の中で生活している。サッカーはそこを抜け出す最短の手段なのだ。
だからこそ、サッカーの才能を持った少年は家族からの重圧を背負うこともある。
「十代前半の少年で最も気をつけなければならないのは親よ」
というのは、サントスFCの下部組織で子どもたちの精神的なサポートをしている、ソーシャルワーカーのシウバナ・トレビサンである。
「サントスの下部組織に合格したことに喜んで、家、土地、全てを売って家族ごとこの街に引っ越してくる親がいる。自分の子どもが、ネイマール、ガンソ、ロビーニョになれると浮き足だってしまう。この街に来ても仕事は見つからない。何もやることがなくてぶらぶらしている」
トレビサンは苦笑いした。
「私たちはネイマールをこのクラブから出したことを誇りに思っている。ただ、ネイマールに引きずられて、自分を見失ってしまう親や子どもが多い」