あまりに大きすぎる予算規模
そうなれば、カタールの影響力は弱まる、むしろサッカー界から追放されてもおかしくない。W杯開催地の返上もあり得る話だ。だが、田村氏は「極端なことにはならないでしょう」と語る。
なぜならば、カタールからの恩恵があまりに大きいからだ。彼らの金銭感覚はケタが1つも2つも違う。パリ・サンジェルマンの買収で一躍知られることになったが、当然のことながら彼らはそれ以外も投資対象だ。
例えば、自動車大手のフォルクスワーゲン・グループの株のうち17%を保有している。その額は約1兆円だ。
金融業へも大きな影響力を持とうとしている。中国農業銀行へは約2900億円もの投資をし、クレディ・スイスの株も6%保有している。プレミアリーグのスポンサーとして有名なバークレイズ銀行はカタールが筆頭株主である(約6000億円を投資)。
百貨店のハロッズも彼らのものだし、シンガポールのラッフルズホテルも既に買収が済んでいる。最近ではエクソン・モービルに次ぐ世界2位の石油企業、ロイヤル・ダッチ・シェル株の買い増しも発表している(既に約3%は取得済み)。
“カタール”と呼ばれる彼らの正体はカタール投資庁の直轄機関、カタール・ホールディングス。運用資産は約10兆円以上。サッカー界への“投資”など彼らにとっては小銭を使うようなものだ。
あまりに大きすぎる予算規模のため、札束で頬を叩くというよりも、サッカー関係者が自ら頬を出していったと考えても不思議ではない。
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