小柄な選手にとっての恩人
今では、世界一のミッドフィルダーと言っても過言ではないチャビ・エルナンデスだが、ルイス・アラゴネスの存在を無くして、今の自分はなかったと断言している。当時、背が低い選手はいくらテクニックがあっても、やはり背の高い中盤やFWの選手と組み合わせてチーム編成をするのが通常だった(今でもその傾向は大きい)。
そんな常識を覆し、周囲からの批判にも負けず、チャビ、イニエスタ、シルバ、ビジャなどの背が低い選手のみで作り上げたスペイン代表の攻撃陣が、その後、屈強で背が高いディフェンダーを乗り越えて勝利を手にしていった様子は圧巻であり、周囲を驚愕の渦に巻き込んでいったものだった。そこからスペイン代表の栄光の道は始まったのだ。
アラゴネスのように、夜を徹して「あの時は」とサッカーの歴史を選手に語り、選手と戦術を議論し、選手に敬語を崩さず、選手をかばうためには全マスコミを敵に回し……そんな関係が、日本代表やクラブチームでも、いつかやってくるだろうかと思う。
こういった一つひとつの関係が、選手を作り、チームを生み出し、ひいてはリーグ全体のレベル向上に繋がっていくのだとつくづく思う。ローマは一夜にしてならずだ。
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