ジグナルイドゥナの隣が主戦場
主戦場の名を、「Rote Erde」(ローテ・エルデ)と言う。
欧州中にその名を轟かせる最強のアウトサイダー集団、ボルシア・ドルトムントが、かつて本拠地とした。
ジグナルイドゥナパークのすぐ隣にある年老いたスタジアムでは、観衆が1724人に留まったとは思えないほど、生々しい熱気が漂う。スタンドの一角ではドルトムントを愛する人たちが気焔を挙げている。それはジグナルイドゥナでの戦いと何ら変わらない。
試合開始前の古びた通路には、灰色の鉄柵の向こう、引き締まる表情で視線を前へと走らせる丸岡満がいた。黄色と黒のユニフォームを身に纏い、胸には「BVB」の文字が刻まれている。
丸岡満(みつる)がセレッソ大阪からボルシア・ドルトムントへと加入しておよそひと月が経った(買い取りオプション付きの期限付き移籍)。
2014年2月1日、丸岡がその一員として戦ったボルシア・ドルトムントⅡは、3.Liga、つまりブンデスリーガ3部を戦うドルトムントのU-23チームである。第23節の1.FCヘルデンハイム戦が行われたローテ・エルデは、2月にしては少し暖かい。
前節のSpVgウンターハヒンクとのアウェイでは65分から途中出場した丸岡は、スターティングメンバーに名を連ね、雨の降るピッチへと足を踏み入れていった。
「今日はやっぱりグラウンドが全然良くないので、自分のエリアでは出来るだけパスを回さず、前に前に送れ、という指示で送り出されました」
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