「ネイマールを一目見て素晴らしい選手になると直感したよ」
かつてジーコは、自分の最大の才能は立体的な視座を持っていたことだと話してくれたことがある。
「ピッチを一望できる観客席は全部の選手の位置関係が見える。だから、凡庸な選手よりも観客の方が、どこにパスを出すべきか分かっている。有能なサッカー選手は観客席と同じように他の選手の位置関係を把握しているものだ。
観客席の人間が考える場所にパスを出し、シュートを打つことができる。そして、もっと能力の高い選手になると、観客席の人間でさえ気がつかない、最適の場所にパスを出すことができる」
ボールを持った瞬間、いい選手はプレーの選択肢を幾つも頭の中に準備して、最適のプレーを選択する。そのため、リマはボールを持った瞬間の選手の動きを注視する。
リマがネイマールを気に入ったのは、まさにこの点だった。
「次にどういうプレーを考えているのか、その選択肢が他の選手よりも多い。ネイマールを一目見て素晴らしい選手になると直感したよ」
ネイマールは手の掛からない選手だったと振り返る。
「今とプレースタイルはあまり変わらない。ただ一つ、ポジショニングは教えた。フットサルから来たばかりの頃、彼は前でボールを受けようとした。しかし彼は身体が小さく、ひょろひょろだった。
屈強なディフェンダーがいると簡単にボールを受けられない。だから、もっと手前でボールを受けろと言った。彼はボールを持てば世界で最も速い選手だと思っている。ボールを持つことでリズムが出てくる」