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【特別対談】加部究&幸野健一:理不尽が横行する高校サッカーの非常識。真の「プレーヤーズ・ファースト」が浸透するために必要なこと(その2)

シリーズ:【特別対談】加部究&幸野健一 text by 森哲也 photo by editorial staff

子供を一人成人にするぐらいの経験をした大人が指導すべき

――確かにそうですね。練習は量をこなすことが良いと思っているのか、それとも不安だから量をこなすのか。

幸野 量をこなすというのは、戦後の日本の経済成長を支えてきたやり方じゃないですか。マニュアル化して規格品を大量に作っていく時代には良かったんです。でももうそのやり方は通用しない。

 一人ひとりが個性を伸ばして、自立した子ども達を育てていかないと立ちいかないわけです。だから育成の根本的なところを変える必要があります。高校サッカーというよりも、むしろ4種から改革が必要だと思います。育成に携わる指導者は、そうしたことを学んでほしいです。

加部 下に行けば行くほど学んでないですよ。

幸野 ヨーロッパだと、育成年代ほど経験のある指導者が担当します。何故かといったら、育成カテゴリーこそ人間教育が大事だからです。たとえば、育成年代の選手たちはコーチの心ない一言でサッカーを辞めてしまうかもしれない。そういう意味で、育成のコーチほど経験が必要です。日本は逆になってしまっていますけど。

加部 ヨーロッパはトップチームから育成カテゴリーが連続しているけど、日本は小学校とか中学校で完結していることが多い。これだと、各カテゴリーで結果を出すことを優先して次のカテゴリーのことを考える余裕がない。結果が出ないと子どもが集まらなくなってしまうわけですからね。

幸野 人間教育を重視するのであれば、子供を一人成人にするぐらいの経験をした大人が指導すべきです。起こり得る問題とか予測できるわけだし。そこを20代の監督がやるとなると難しいと思う。

加部 実際に作陽高校監督の野村(雅之)さんが「自分の子供ができてから(指導が)変わった」と言っていましたよ。子どもが成長している様子をある程度見ていないと、子どもの伸び方なんてわからないですよね。

――難しいですね。

(次回に続く)

それでも「美談」になる高校サッカーの非常識
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加部究・著
■高校サッカーの不都合な真実 ■指導者たちが抱えるジレンマ
■理不尽な指導がなくならない理由 ■「楽しむ」を悪にしない指導者たち
■未来 「育成」のあるべき理想像とは?

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