「あれだけ守られたら、俺が出ていてもうまくいっていなかった」
「代表の試合が久々すぎて最初の方はちょっと感覚が掴めなかった。でも自分がトップ下に入って何を求められるかといえば、スルーパスや裏に抜ける飛び出しだったりと圭佑とは違うこともやらないといけない」と試合勘の不足を感じながらも、やるべき仕事は明確になったようだ。
ただ、タジキスタンも格下であるがゆえに、北朝鮮戦のように守備的に来る可能性が高かった。となると、トップ下は自由にやらせてもらえない。中村憲剛も柏木の苦境に思いをはせた。
「あれは誰でも難しい。あれだけ守られたら、俺が出ていてもうまくいっていなかったんじゃないかと思う。タジキスタン戦も同じことが起こり得る。だからやり続けるしかない。もらえる場所に顔を出しながら、諦めないでポジションを取り続けて、ボールの出し入れを繰り返す。
そうすればバイタルで自分が勝負できる時が絶対に来る。そこでしっかり勝負すればいいんじゃないかな。前回もそうだったけど、W杯予選は何が起きるか分からない。立ち上がりからスキのない戦い方をしないといけない。自分たちでアドリブを利かせながらやっていきたい」と彼は自分に言い聞かせた。
迎えた長居でのタジキスタン戦。中村憲剛は案の定トップ下で先発した。1トップはハーフナー・マイクで連携面にやや不安もあったが、2列目は岡崎慎司と香川、ボランチに長谷部と遠藤保仁と慣れたメンバーが周囲に陣取ったこと、相手がベタ引きでなかったことが幸いしたのだろう。
彼はベトナム戦とは全く違ったイキイキしたパフォーマンスを披露する。左右に動いて香川や岡崎を中に入れたり、自ら真ん中に入ってスルーパスやワンツーを見せるなど、離脱中の本田とは違ったタイプのトップ下として攻撃陣をリードしたのだ。
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