定位置奪還に懸命に励んでいたマタ
モウリーニョは、アウトサイドの突破力を重視する。前回監督時代のチェルシーが最も強かった2005-06シーズンにも、両翼には、ワールドクラスに昇華中だったアリエン・ロッベンと、全盛期だったダミアン・ダフがいた。
独力で相手ゴールを脅かせる両ウィンガーとは違い、マタの持ち味は周囲を生かすチャンスメイク能力にある。また、2度目の今回は、オーナーが望むボールを支配して攻めるスタイルに取り組むことが予想された。となれば、ポゼッションの維持に前線でのボール奪取は必須だ。
もっとも、守備面の物足りなさは、当初、他のプレーメイカー陣にも共通だった。昨シーズンのように、小柄なマタ、オスカル、エデン・アザールのトリオが2列目に並ぶ姿は見られなくなると思われた。
だが、新監督が「トップ下第1候補」と見立てたオスカルと、「類希なタレント」と期待を寄せたアザールは、意外にもプレッシングとチェイシングをもレパートリーに持つに至った。
だからかといって、マタを責めるつもりはない。一部で放出の理由とされた「ワークレート不足」という意見には同意しかねる。マタは、昨夏の時点では移籍を求めようとはせず、定位置奪回に励んだ。
「ボールを持っていない時にも貢献しなければ」と公言しつつ、ピッチに立てば実際に守備への意欲も見せた。だからこそ、ファンはマタへの愛着を更に強めた。
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