ただの球拾いだと思ってはいけない
このように試合を迅速に進めさせる仕組みのことを、マルチボールシステムと呼ぶ。ボールを7個用意し、ひとつは試合用、残りは予備となる。ひとつのボールだけで試合を行うと、観客席に入った際に熱狂的なファンがボールを返さないといった問題が発生するなど、試合進行の妨げとなってきた。
改善策としてFIFA(国際サッカー連盟)は1995年の女子ワールドカップ、U-17世界選手権にマルチボールシステムを導入。その後Jリーグでも1996年から導入され、UEFAチャンピオンズリーグでも採用されている。
過去のJリーグでは、ボールパーソンと選手の好連携からゴールが生まれたこともある。2010年3月6日のJ1開幕戦、カシマサッカースタジアムで行われた鹿島アントラーズ対浦和レッズでそれは起きた。
鹿島が1-0で迎えた86分、左サイドのタッチラインを割ると、新井場徹にボールパーソンが素早くボールを投げ渡す。新井場のスローインが遠藤康に渡ると、最後はマルキーニョスがネットを揺らした。鹿島の高速リスタートに浦和の選手達は完全に虚を突かれ、反応が遅れてしまった。
迅速に試合を再開させなければというボールパーソンの行動と、素早いリスタートでチャンスを作りたい新井場の思惑が一致した連係プレーだった。
ボールパーソンをただの球拾いだと思ってはいけない。
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