マタが救世主になる可能性は低そうだ
モイーズの4-2-3-1はストライカーを2人入れた4-4-2に近く、中盤の両サイドはモウリーニョ・チェルシーよりさらに守備を強いられる。
トップ下はあくまでルーニーのポジション。スペイン代表MFが守備をしない自身のプレースタイルを変える気がなければ、それで果たしてモイーズのサッカーにはまるのか。
ただし、このまま1月に補強をしないで、来季の欧州CL出場権を逃すような結果になれば、マンチェスター・ユナイテッドに対して、英メディアが痛烈な批判の嵐を巻き起すことは間違いない。
今回のマタ獲得は、モイーズ直々の希望というより、そうした批判をかわすため、とりあえずクラブの経営陣主導で獲得可能の大物選手を穫ったという印象もある。
マタ本人もブラジルW杯イヤーに突入し、出場機会を得るために新天地を選んだと思うが、今回のマンチェスター・ユナイテッド移籍に際し、自分のスタイルとチームのスタイルの相性を熟慮する時間はなかったのではないか。
日本では「香川の最大のチーム内ライバル出現」といったニュアンスの報道が目立つが、連携を得意とする香川と似たタイプなだけに、移籍後、ダイレクトなモイーズ流フットボールとの兼ね合いが心配だ。
それに、今季これまでのマンチェスター・ユナイテッドを見続けてきたところ、負け会見で口ごもるスコットランド人指揮官は、結局規律、フィジカル重視の監督で、香川をはじめとする、創造性の高い選手の扱いがあまり上手いとはいえない。
というわけで、どちらかといえば、マタが救世主になる可能性は低そうだ。それに1本しか成功しなかったPK戦を見た限りでは、選手の自信喪失と士気の低下はかなり深刻。残念ながら今季のユナイテッドは、この惨めなリーグ杯敗退をきっかけに、さらにずるずると泥沼に沈むような不振を続けそうだ。
今回のコラムで初めて香川に移籍を促したのは、出場機会の激減の可能性もそうだが、迷走する監督の下、帝国崩壊とでもいった状況にあるマンチェスター・ユナイテッドにこれ以上留まることが、果たして日本代表MFの将来に役立つのか、そんな暗雲のような疑問が今週のリーグ杯を現場で見て生じたからである。
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