「大世さんを封じることが僕の仕事」
本田のことも気がかりではあったが、吉田には北朝鮮戦を迎えるに当たり、もう1つ大きな命題があった。それは、かつて川崎フロンターレで活躍していた鄭大世を以下に封じるか。2010年南アでも存在感を示したパワフルな点取屋を抑えることが日本の勝利につながるのは間違いなかった。
「大世さんを封じることが僕の仕事。ラインを高く保って、球際を負けなければセカンドボールを取れると思う。大世さんが北朝鮮の一番のストロングポイントだし、そこで起点を作らせなければ相手も苦しくなる。確実に抑えたいです」と意欲をむき出しにしていた。
懸念された本田のトップ下には、2011年アジアカップ優勝メンバーの1人である柏木陽介、欠場した長友佑都の左サイドバックには駒野友一が入ったこの試合。台風12号の接近もあって、予想外の悪天候にも見舞われ、選手たちは非常にやりにくそうだった。
日本は北朝鮮のタイトなプレスに戸惑い、序盤から苦戦を強いられる。柏木は本田のようにタメを作れず、岡崎慎司や香川らがゴール前へ飛び込んでいく時間を作れない。前半のシュートはわずか5本にとどまった。守備陣をコントロールする吉田が鄭大世を徹底してマークし、チャンスらしいチャンスを作らせていないことが、多少なりとも救いだっただろう。
後半に入ってからも流れは大きく変わらず、ザック監督は15分に柏木と清武を交代。香川をトップ下に置く布陣変更に打って出る。しかし北朝鮮も粘り続け、梁勇基の左CKを当時バーゼル所属の長身FWパク・クァンリョンが強引に頭で合わせてきた。これを懸命に体を寄せて防いだのが吉田。危険なシーンではあったが、何とか踏みとどまったのは大きかった。