「どうやってこの状況をポジティブに持っていけるか」
2011年8月の日韓戦で香川真司が長期離脱から復帰して2ゴールを挙げ、本田圭佑も好調をキープ、新顔の清武弘嗣が衝撃的なデビューを飾るなど、2014年ブラジルW杯アジア3次予選を控えたザックジャパンのチーム状態は順風満帆かと思われた。
ところが、直後の8月末、チームに激震が走る。本田がスパルタク・モスクワとのモスクワダービーで右ひざ半月板を損傷。9月2日の3次予選初戦・北朝鮮戦のためにいったんは帰国したものの、一度も練習に参加しないまま離脱を余儀なくされたのだ。
2010年南アフリカW杯以降、本田不在の攻撃陣というのは一度もなかっただけに、ザッケローニ監督も頭を抱えたに違いない。本田の代役問題はチームに重くのしかかり、その一番手と目された中村憲剛も離脱。日本代表に暗雲が立ち込めた。
本田の背中を追いかけるように名古屋グランパスからVVVフェンロへ移籍し、日本代表入りした後輩・吉田麻也も大黒柱不在を懸念した。
「僕にとって本田さんは一番パスを出しやすい選手だから、いなくなるのは残念。だけど予選の間にはこういう状況も出てくる。本田さんだけじゃなくて他の選手がいなくなる時もあると思う。それをみんなで埋めていかないといけない。
逆に他の選手にとってはチャンスになるし、競争が生まれてくればもっといい。終わってしまったことは仕方ないんで、どうやってこの状況をポジティブに持っていけるかだと思います」と彼は普段通り、前向きな姿勢を失わなかった。
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