協賛企業へのアピールのために
こうした動きに敏感に反応したのが、Jリーグを協賛する各企業だ。
2008年シーズンをピークに観客動員数や地上波でのテレビ放送回数が下降線をたどり、Jリーグへの関心度も3分の2の約30%に激減。各スタジアムを訪れる観客の平均年齢が年に1歳ずつ上がり、一人当たりの年間観戦回数が極端に上昇していることは、若年層から見向きされていないことと、特定のファンに支えられていることを物語っていた。
スター選手の海外移籍により拍車がかかる中で、Jリーグは未来に対して明るい数字を示すことができなかった。株主への説明責任を果たす義務がある以上、協賛企業の財布の紐も必然的に堅くなる。7月の実行委員会を経て、舞台裏では事態が急変していた。
中西理事は言う。
「今年のJリーグの事業収入は、2008年のピーク時と比べて15億円ほど減っています。来年はさらに、今年の額から最大で13億円のマイナスが見込まれてしまったんです」
有料テレビの放映権料に支えられている英プレミアリーグなどと異なり、Jリーグの事業収入は協賛企業からのスポンサー料に負う部分が大半を占めている。来年のリスクが現実のものとなればどうなるか。中西理事は最悪のシナリオを明かす。
「Jクラブへの配分金に、初めて手をつけざるを得なくなるんです」
昨年度はJ1のクラブに2億円から2億5000万円、J2のクラブには1億円がJリーグからの分配金として支払われている。減額はJ1で4000万円、J2で2000万円と試算された。J1はともかく、J2の中で経営規模が3億円から4億円のクラブにとっては経営を揺るがす死活問題となりかねない。
ここにきてアビスパ福岡の経営危機が表面化している。万が一、あるクラブが倒産でもすれば、負の連鎖を起こしかねない状況にJ2クラブのいくつかは直面していると言っていい。一方で配分金額を維持しようとすれば、Jリーグが長く実施してきた育成年代への投資の原資がほぼ枯渇する。7年後の東京五輪開催が決まった中、育成の灯を絶やすことは日本サッカー界全体の未来が先細りになることを意味する。
Jクラブへの配分金と育成への投資。両方で現状維持を図るには、来年のリスクを排除するしかない。Jリーグは変わるという強いメッセージを発信して、協賛企業が抱くネガティブなイメージを払拭するしかない。再びスポンサードしたいという魅力を伝えるしかない。
数々の矛盾を抱えることを承知の上で、わずか2ヶ月後の9月11日の実行委員会において、新大会方式の枠組みだけを決めた最大の理由がここにある。