不完全な形態である新大会方式
9月の理事会で承認された、2015年からのJ1開催方式を言い当てるのにぴったりな諺(ことわざ)がある。
仏作って魂入れず。
最も肝心なものが抜け落ちていることのたとえだが、2ステージ制とともに導入されるポストシーズンは枠組みこそ出来上がっているものの、中身は矛盾と分かりづらさに満ちていた。しかも、重大な問題点の解決が先送りにされていたのだから、机上の空論だったと言っていい。
5チームが進出するポストシーズンは、スーパーステージ(仮称)とチャンピオンシップから成る。各ステージの1位と2位のチームがたすき掛けで対戦するのがスーパーステージで、その勝者がシードされた年間の総合勝ち点1位のチームとチャンピオンシップとして対戦する。
ここで問題なのが、年間の総合勝ち点1位のチームは極めて高い確率で両ステージの2位以内に入ってくることだ。昨シーズンを2ステージ制でシミュレートすれば、年間の総合勝ち点1位のサンフレッチェ広島は第1ステージで2位、第2ステージでは1位。これではスーパーステージの山組みが成り立たない。
一連の改革を推し進めてきたキーマン、Jリーグの競技・事業統括本部長を務める中西大介理事も、矛盾を抱えている新大会方式という指摘を否定するどころか肯定する。
「一番の欠点はそこだと思います」
不完全な形態であることを承知の上で、決定に至ったのはなぜなのか。拙速感を否めないのはなぜなのか。実はJリーグは、9月の段階で2015年シーズンからの新大会方式の導入を決定し、公表しなければならない切迫した理由を抱えていた。
6月28日のブリーフィングで配布された「Jリーグ戦略会議 進捗状況」と題された資料には、ポストシーズンを導入する大義名分として次のような項目が謳われていた。
「Jリーグの収入増とメディア露出増の両方を実現できる施策を検討する必要がある」
しかし、直後の7月6日に再開されたJ1の各スタジアムで、すでに報道されていた2ステージ制復活に反対する横断幕がいっせいに掲げられた。事態を重くみたJリーグは、3日後に開催したJ1・J2合同実行委員会で大会方式変更を継続審議とすることを決定。時間的な問題で来シーズンからの変更は事実上見送られ、2015年シーズン以降に関しても、外部への説明を徹底することを何よりも優先するとした。