ドイツで通用した絶妙な間合い
シャルケに移籍して以来、内田は守備力を向上させてきた。ドイツに渡る以前は、攻撃を特長としていた内田だったが、ドイツサッカーでは、DFはまずディフェンス。つまりポジションの役割をしっかりこなさなければならない。
特に求められるのが1対1の球際での競り合いだ。カバーリングの意識は他の国に比べると薄く、ドイツではまず1対1で勝つことが最重要視される。ブンデスリーガでは『ツヴァイカンフ』と呼ばれる球際の競り合いをデータとして集計し、その勝率が公表されているほどだ。
内田は体の線が細い選手であるため、ツヴァイカンフで高い勝率を記録するのは難しいようにも思える。ところが13-14シーズン、ブンデスリーガ第13節までのスタッツを見ると、内田はツヴァイカンフにおいて52.9%の勝率を記録。
シャルケのチーム全体としてのツヴァイカンフの勝率が49.2%であること、さらにポジションごとに比較するために反対側の左サイドバックを見ると、フクスが48.5%、アオゴが48.7%になっている。これらの数字からは、内田の球際の競り合いが平均以上のパフォーマンスであることが客観的にわかる。
なぜ、華奢な内田が球際に競り勝つことができるのか? 理由のひとつには、内田が『間合いの達人』であることが挙げられる。相手からボールを奪うためには、自分の足が届く距離にまで間合いを詰めなければならないが、うかつに詰めすぎると、逆を突かれて入れ替わられてしまう。1対1の勝負は、いつ、どのように間合いを詰めるのか。その差し合いがすべてと言っても過言ではない。その間合いの感覚を、内田はドイツで磨き上げてきた。
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