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ボスニア代表を悲願のW杯初出場に導いたオシムの献身

ボスニア・ヘルツェゴビナ代表がW杯初出場を決めた裏にはオシムの献身があった。この国は偏狭な民族主義を越えていけるのか。最新号の『サッカー批評issue66』(双葉社、1月10日発売)では、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表の光と陰をレポートしており、その一部を紹介する。

text by 木村元彦 photo by Getty Images

【サッカー批評issue66】掲載

遅れを取ったボスニア

ボスニア代表を悲願のW杯初出場に導いたオシムの献身
ボスニア・ヘルツェゴビナが建国後初めてのワールドカップ出場を決めた【写真:Getty Images】

 ボスニア・ヘルツェゴビナが建国後初めてのワールドカップ出場を決めた。ブラジル大会では唯一の初出場国でもある。これを快挙と言うことに異論を挟む者はいないはずだ。旧ユーゴスラビアから分離独立した国々の中では、まずクロアチアとセルビアが98年フランス大会で先陣を切って出場、スロベニアが2002年日韓大会で続いた。

 後塵を拝してきたのには構造的な問題があった。

 ボスニアのクロアチア人やセルビア人はこの人工的に分割された国にアイデンティティを見出せず、自分たちの志向を常に本国の方に向けていたのである。それ故にこの2つの民族から才能ある選手が出て来ても、ボスニア代表という道を選ばずにそれぞれクロアチアやセルビアの代表キャリアを選択してしまう。いわば人材流出の宿命を背負わされていたとも言えよう。

 しかし、今回の代表チームには数は少ないが、セルビア系(ズベズダン・シシモビッチ)やクロアチア系(トニ・シュニッチ)の選手が存在する。セルビア人共和国のサポーターもマジョリティではないが、徐々にボスニア代表を応援する空気が増えてきたという。まだまだボスニアには政治的に解決しなくてはいけない問題が山積しているが、少なからず、サッカーの世界では大きな仕事をやり遂げたと言える。

 実はその背景にイビツァ・オシムの献身があったということは、すでにいくつかの媒体で書いたり、話したりしてきたが、改めて経緯を記しておきたい。

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