接着剤のような役割を果たした香川
最近のマンチェスター・ユナイテッドは、3連敗中ということもあったが、金属疲労でも起こしているかのように、攻撃が固くひび割れていた。
パスが全くつながらなかった。とくに「ファイナル・サード」と呼ばれる、相手陣営3分の1の危険エリアでボールが回らない。
それは速さと強さだけでごり押しするパワープレーに偏っていたからだろう。「ゴールが奪えない」「試合に勝てない」、そんな思いが当然焦りにつながり、さらに力づくのプレーになって連携を欠いた。
そうした金属疲労を、香川がトップ下に入ることで見事に和らげた。日本のNO.10が、攻撃陣の接着剤のような役割になった。固くひび割れていた連携に、弾力あるしなやかなグルーを流し込んだかのように、香川が攻撃陣をきめ細やかにサポートしたことで、ボールがマンチェスター・ユナイテッド選手の足元におさまりはじめ、相手陣営で回り始めた。
柔と剛の融合。今のマンチェスター・ユナイテッドにもっとも足りなかった「柔」を香川がもたらしたのだ。
ただし今回も、後一歩のところまで迫ったが、日本代表MFに結果はついてこなかった。
まずは後半21分、ゴール前に飛び込んだスモーリングの足元へ、これ以上はない見事なピンポイントクロスを放ったが、この絶好のボールをイングランド代表DFがふかしてバー越え。ゴール前3メートルの位置だっただけに信じられないシーンとなった。
コーナーキックからの流れだったので最前線に残っていたわけだが、このクロスの行き先がディフェンダーだったのもツキがない。これで1アシストが消えた。
また後半31分には、カウンターから、最前線に抜け出した香川にラファエルがきっちりスルーパスを送った。最後のDFを交わして、GKの手元をすりぬけるシュートを放ったが、最後にバランスを崩してボールに勢いなく、駆け戻った相手MFブリットンが、このシュートをきっちりゴールライン上でクリアして、またしても得点はならず。これで今季初ゴールも幻と消えた。