お父さんの応援に。そこにいたお姉さん
毎年、正月になると、東京へ家族旅行に出かけていた。家族旅行なのに、行きも帰りもお父さんはいない。そりゃそうだよね、お父さんは名門高校サッカー部の監督。
行先は東京で開催されている全国高校サッカー選手権大会。お父さんが指揮を執る高校は毎年のように出場していて、幼いころから家族で応援に行くことが恒例となっていた。
私が小学生になると、土日は決まってお父さんのチームの練習や試合を観に行っていた。
必死でサッカーボールを追いかけるお兄さんたちの脇で、負けじと一生懸命働くお姉さんたちの姿があった。
「何をしているんだろう?」。私は幼心に思っていた。
「さっちゃん、私たちはね、選手のみんながサッカーに打ち込めるようにがんばっているんだよ」。お姉さんは、私にそう言ってくれた。
「私もやってみたい!」
その日から私もお姉さんたちの手伝いをし始めた。ボトルに水を入れたり、ボールを片付けたり……。それが楽しくて、楽しくて仕方がなかった。
「さっちゃん、ありがとう」
お兄さんたちが、お姉さんたちが、笑顔で言ってくれる。私はその笑顔が見たくて、夢中になって手伝っていた。
そして、家では見せないような、厳しくも真剣なお父さんの姿があった。試合に勝つと喜び、試合に負けると悔しがる。私はお父さんのことがますます好きになった。いつしか、私の夢はお父さんの高校サッカー部のマネージャーになることになっていた。
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