スタジアムを飲み込むクラブ・アンセム
イタリアのクラブ・アンセムは「インノ(Inno)」という。いかつい野郎どもが声を合わせるには、少しばかりイイ子ちゃんな歌詞とポップなメロディーが多い。例にもれず、ミランのインノも爽やかだ。その名も『Milan Milan』。70年代ディスコ全盛期といった感じのイントロで始まり、途中に入るデジタルドラムのフィルインが郷愁を誘う。
「ミランミラン、君だけと共に
ミランミラン、いつだって君のために
歩もう、我らが英雄と共に
緑のフィールドの上、青い空の下
勝ち取っておくれ 星をもう一つ
それは、僕らのために 輝くのだから
さあ共に歌おう!」
ボーイスカウトのキャンプファイアーソングのようで、気恥ずかしいくらいだが、どこのクラブの歌詞も似たりよったりである。詞中の「星(stella)」とは、「勝利」を指しているのだが、その他にも、スクデットを10回取るとユニフォームの胸に付けることが許される、「金の星」にも由来するらしい。曲の終わりに「脱暴力」を説く歌詞が出てくるのだが、いろいろやらかしているクルヴァ・スッドが歌う姿は、少々滑稽でもある。
曲を作ったのは、トニー・レニスとマッシモ・グアンティーニ。レニスはオペラ好きなら知っているかもしれないが、盲目のテナー、アンドレア・ボチェッリのアルバムをプロデュースしたり、レニス&グアンティーニのユニットで、楽曲を提供したりしている。フリオ・イグレシアスの『AE, AO』も、彼らの曲だ。
二人とも、ミランのティフォージだったらしい。グアンティーニは、昨年の夏に亡くなっている。
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