「ちょっと重たい」。0円提示の話
プロの世界は結果がすべてだ。原因を自分に求める態度は潔いし、それは高野の持つ美点でもある。でも、よそのクラブ、国内外を問わず育成をウリにするところはもっと本気なんだよ。トップに上げた選手は、あらゆる手を使って一本立ちさせようとクラブ全体で取り組む。それでもなかなかうまくいかないのが、育成のむつかしさだ。
「このこと、何人かの親しい選手には話していますが、(92年組の)みんなには言えていない。ちょっと重いですね。こないだヨシアキ(高木善朗・清水エスパルス)から電話があったんですが、話せなかった。
親にも話しづらい。僕、親とはけっこう何でも話せる間柄で、反抗期とかなかったんですよ。辞めると決めたわけではないですけど、迷っているとも言いづらい」
そもそも今回だって、訊かれなければ話すつもりはなかったはずなのだ。もし訊かれたとしても、テキトーにごまかしちゃえばいいのである。「ま、いろいろ考えちゃいますね」くらいにして。高野の持つ誠実さ、律義な姿勢がそうさせた。
92年組の選手で、順風満帆のキャリアを歩んでいる者はひとりとしていない。それぞれの鬱屈を抱え、現状を打破しようともがいている。
「周りは気にならないです。こんな言い方をしたらアレですけど、昔からほかの人がこうしているから自分も、とは一切思わないタイプ。決めることは自分で決めます。周りに興味がないんですね。かといって、自分にもそれほど興味があるわけではないんですけど。他人には冷たい人間なんです、きっと」
それは違うぞ。チームメイトの感受性と洞察力を見くびってはいけない。「光司ほど仲間思いの奴はいない」と、誰もが口をそろえた。練習後の帰りの電車、いつもは適度に距離を取るキローラン兄弟だって(仲は良いが、並んでいるのを見られるのが恥ずかしいらしい。双子特有の事情)、君がいればくっついて座るんだ。これは関係ないか。
結論はいつ出すのか、訊いた。場合によっては、しばらくこの原稿は出せない。すると、10日後にははっきりするという。現役続行となれば、当然17日のJPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウトに挑むことになる。