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あなたが観ている試合には“台本”があるかもしれない(後編)

text by デクラン・ヒル photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

なぜいつまでも不正はなくならないのか?

 バーナード・ショーの言葉に私は賛成しない。「ジョーク」だとすれば素晴らしいが、アメリカに良識ある人が多くいるのはみなが知るところだ。そのうちの一人、マーティン・ルーサー・キング牧師はこんな言葉を残している。「正しいことをするのに、時を選ぶ必要はない」。このままサッカー界が退廃に向かうのを見たくはない。

 愛するスポーツを守るために八百長フィクサーの「打ち合わせ」に同席したり、大物フィクサーの行動を密かに追って命を危機に晒した者として言いたい。私たちにできることはたくさんあり、今こそ行動を起こすべきときだと。情報収集と調査への協力が可能な、合法的な「賭博産業」から資金の一部を得て、独自の世界アンチ汚職機構を設立することもできる。世界アンチ・ドーピング機構と同じ目的と構成から成るものだ。

 若い選手への適切なトレーニングと育成をし、選手に適切な年金と教育を与えることができる。選手や審判が、不正行為を持ちかけられた際に報告できるアンチ汚職ホットラインを設けるのもいい。広くはびこる汚職を食い止める、簡単で実行可能で、効果的な方法はいくつもある。

 しかし、この危険に満ちた新しい問題との闘いを率先して行っている国際的なスポーツ機関はない。汚職対策に取り組む一部の人が、さまざまなスポーツ機関に働きかけては追い出される、ということを繰り返しているだけだ。IOC(私も彼らの前で証言をしたが)は、口先ばかりで具体的には何も行動しないヨーロッパの役人たちと会議をするようになった。それだけでも前進だ。何もしないよりはいい。

 なぜ何も行動を起こさないのかを理解するのは簡単だ。この問題に関してスポーツ関連組織は、腐った肉を生産する食肉加工工場のオーナーのようだ。彼らが責任を負うスポーツ界で起こる汚職のニュースをもみ消すことに必死なのだ。スポーツ界に、独立したアンチ汚職機関が必要なのはそのためだ。

 スポーツを守るために私たちができることは本当にたくさんある。だからスポーツ界を一掃しよう。スポーツは、私たちの社会で希望や夢を運ぶ船のような存在だ。私たちはスポーツ界を一掃すべきだ。若い世代と次の世代のために、私たちはスポーツ界を一掃しなければならない。そして今すぐにでも対策を本格的に始める必要があるのだ。

【了】

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