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あなたが観ている試合には“台本”があるかもしれない(後編)

なぜ八百長はなくならないのか? ベストセラー『黒いワールドカップ』で八百長問題を丹念に調査した著者が再び筆をとり、最新事情をレポートする。(翻訳:山田敏弘)※2013年8月時点

text by デクラン・ヒル photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

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犯罪行為を撲滅させるシンプルな方法

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【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 私は今年、インターポール、ヨーロッパのサッカー協会、FIFAの幹部の集まりで講演をするため、ローマに招かれた。講演のテーマは、ずばり、どうやって八百長を食い止めるか、だ。それはシンプルなことだと私は言った。ダン・タンとアジアのフィクサーグループを逮捕し、裁判にかければいいのだ。

 ちなみに、それでも最近では、本気で問題に取り組む意志を示す国はある。たとえばハンガリーだ。2013年5月、32件の八百長試合を仕組んだとして、ダン・タンを容疑者不在のまま起訴した。その対象になった試合はハンガリー国内リーグやハンガリーで開催されたユースの国際試合だけでなく、イタリアやフィンランドで行われたものもある。さらにはクラブの国際試合2件も含まれる。

 インターポールでの講演の後、私は耳を疑うような言葉を受けた。インターポールの幹部が私に、もう彼らの会議に私を呼ぶことはないと告げたのだ。会議であまりに物議を醸すからだという。あまりに物議を醸すと? 何という事なかれ主義か。私が言いたいのは、名の通った容疑者は逮捕されるべき、ということだけだ。

 ダン・タンが有罪だとは言っていない。世界の複数の国の司法機関が、彼と八百長スキャンダルの関連を見つけ出しており、それゆえFIFAやインターポールなどの国際組織が彼の逮捕を要請すべきだと言っているにすぎない。非常にシンプルなはずだ。しかし、実現はしない。

 FIFAが大規模な犯罪に法の裁きを受けさせるための行動を起こさない限り、または、八百長を壊滅させるべく大規模な対策が取られない限り、私たちは今日のスポーツ界の大きな隠蔽を目撃し続けることになるだろう。

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