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あなたが観ている試合には“台本”があるかもしれない(前編)

増え続ける汚職の例を紹介

 市場の規模が把握できないほどになった結果として何が起きたかというと、この大規模な違法賭博市場がアジア全土のスポーツを腐敗させることになったのだ。

 大げさに煽るつもりはないのではっきりしておくが、汚職とは全く無縁であるスポーツのリーグがアジアにもいくつかはある。日本のサッカー界はそのうちのひとつだと思うが、これは本当に例外的だ。増え続ける汚職の例をいくつか紹介しよう。

●日本の大相撲における八百長は深刻な状況で、もはや儀式化しており、アメリカのエコノミスト、スティーブン・D・レヴィットとマーク・ダガンによって学術的な論文も書かれている。ただ現在は改善されている可能性もある。

●台湾の野球リーグは、八百長賭博関連で多くのスキャンダルが生じたために、現在わずか4チームにまで減少してしまった。

●韓国では、サッカー、野球、競艇、さらにはコンピューターゲームのリーグでさえも、八百長スキャンダルに見舞われている。数年前に私は、八百長の拡大に関心をもつ韓国人ジャーナリストから電話を受けた。彼は八百長は国際的な問題だが、韓国では絶対にありえないと確信していた。選手たちは非常に高潔で、絶対に八百長などしないと主張していたのだ。だが、彼は明らかに間違っていた。その後判明したことだが、韓国では汚職が蔓延し、国のスポーツの多くが「社会の恥」になっていることは今となってはよく知られている。

●「中国のサッカーリーグは国の恥だ」。これは、中国の胡錦濤前国家主席が2009年の秋に述べた言葉だ。同国のサッカーリーグには八百長と汚職が横行していた。これもまた今ではよく知られている。

●同じような状況が、他の地域のサッカーリーグにも見られる。ベトナム、香港、インドネシア、カンボジア、ラオス、タイ、マレーシア、シンガポールでは、国内リーグで同じようなスキャンダが起きている。マレーシアは汚職がひどく、閣僚の一人が国内リーグの試合で実に70%が不正なものだと推定した。70%とはとんでもない数字である。つまり観客にとっては、真剣勝負の試合よりも、八百長試合を見る確率のほうが高いということだ。

 シンガポールとマレーシアが共同で設立したサッカーリーグには不正が蔓延し、その一掃を試みようとした際、両国間に外交的な亀裂が生じかけたほどだ。マレーシアは、リーグが腐敗しているのはシンガポールのギャンブラーたちが多くの試合で八百長を行っているからだと主張。一方のシンガポールは、八百長はマレーシアの犯罪者が仕掛けていると反論した。結局主張は平行線のままでどちらも折れることはなく、最終的には汚職を理由にリーグは解散してしまった。

●インドネシアサッカー協会の元会長は、単に汚職で告発されたとか起訴されただけにとどまらず、汚職で有罪判決まで受けた。そして懲役30ヵ月の実刑判決を下された。しかもその間、彼は独房にいながら辞職も停職もせず、出所後もしばらくの間、サッカー協会のトップに居座り続けた。

【中編へ続く】

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