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あなたが観ている試合には“台本”があるかもしれない(前編)

腐敗していくアジアのスポーツ

 スポーツの賭博市場の全体を100とすると、私たちに身近なもののほとんどは比較的小規模だ。たとえばカジノで有名なラスベガスも、全体からすればシェアはごくわずか。北アメリカには、アメリカの犯罪組織ラ・コーザ・ノストラ(LCN)が手がける違法スポーツ賭博市場がある。

 コスタリカやカリブ海の国境を越えた賭博市場も存在する。また、イギリスには、ラドブロークス、ウィリアムヒル、ベットフェアといった大手ブックメーカー企業もある。

 ヨーロッパ各国のスポーツくじは、ほとんどが政府によって運営され、スポーツ賭博としての規模は小さいものの、多くの国で合法的に行われている。こうしたさまざまな組織と、彼らが生み出す何十億という総売上高を合わせても、世界のスポーツ賭博市場全体の30~40%を占めるにすぎない。

 残りは、アジアの市場が占める。その莫大な規模は、ヨーロッパや北アメリカ市場をちっぽけなものに感じさせるほどだ。そしてそのほとんどが違法に行われ、アメリカで有名なギャングのボスだったアル・カポネのようなマフィアによって運営されている。非常に大規模で強大な市場だ。

 違法に行われているため、規模の正確な数字を出すのは困難だし、私も実際の規模は把握しきれていない。違法ドラッグ業界などのように業界の規模がはっきりと把握できないために最終的なデータが誇張されてしまっているのと同様に、この市場も注意が必要だ。

 実際よりも規模を大きく見せることで利益を得る人間がいるからだ。つまり賭博の規模が大きいと認識させれば、賭ける側も大きく賭けようという気になる。

 それでも、世界宝くじ協会(政府が運営する賭博会社によって構成される)の会長は、違法なスポーツ賭博市場の規模はおよそ900億ドルに達すると推定している。

 一方、アジアを拠点にする世界最大の政府運営賭博会社「香港ジョッキークラブ」のある上級役員は、アジアの違法スポーツ賭博市場は、およそ1兆円規模にもなると推定する。

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