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優勝しても罰走、生徒は使い捨て、自己満足の監督。高校サッカーの不都合な真実

text by 加部究 photo by Kenzaburo Matsuoka

至近距離からボールを蹴りつける監督

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写真はイメージです【写真:松岡健三郎】

 ある時監督はグラウンドでAを正座させると、2~3mの至近距離から思い切り顔面にボールを蹴りつけてきた。根性をつけるトレーニングだというが、脳に障害を与え、場合によっては生命を奪いかねない危険な行為だった。

 一瞬、Aには殺意が過ったという。だが親のこと、特待生として入学してきた自分の立場を考え、思いとどまった。

 在学中は、そんなことの繰り返しだった。一般受験で入学した選手なら、サッカー部を辞めても学校には残れる。しかし特待生は、サッカーをやるために好条件を受けているので、退部=退学になるケースが少なくない。

やはり学歴社会の色が残る日本で、高校中退は避けたかった。さらに自分が途中で辞めると、同じクラブや中学の後輩たちがその高校に進めなくなるのでは、というプレッシャーもあった。

 結局Aは、3年時の全国大会をベンチで座ったまま見届けることになる。

「本当はもう忘れてしまいたい。とにかく僕には逃げ道がどこにもなかった」

 チームメイトには、鬱症状を抑えるために薬を服用している生徒もいた。

 一方で外車2台を乗り回す監督は、極端に感情の起伏が激しく、機嫌が良いと鬱屈した生徒の気持ちなど一切斟酌せず、新調したスーツの自慢をして呆れさせるのだった。

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