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優勝しても罰走、生徒は使い捨て、自己満足の監督。高校サッカーの不都合な真実

text by 加部究 photo by Kenzaburo Matsuoka

優勝を決めても待っていたのは罰走

 両親は心が張り裂けそうだった。小さい頃から、何よりもサッカーが大好きな子だった。それから両親は、彼が卒業まで涙を流しながら過ごすことになる。

 監督は途中から親に会うことを禁じていた。父はあまりに心配で監督に直接連絡を取ろうとするが、入学前にはざっくばらんに話してくれた監督が、一切電話を取ろうともしなくなっていた。

 ある時両親は、実家の近くでフェスティバルが行われたので、観戦に出かけてみた。チームは1学年上のトーナメントに出場し、見事に優勝した。ところが3-1で勝利した最後の試合で1失点したことが、監督の逆鱗に触れた。

 連日1学年上のチームと過密日程で試合をこなし疲弊しきった選手たちは、優勝を飾ったにもかかわらず怒鳴りつけられ罰走を課される。近所の長い階段で何十回も上り下りが続けられた。しかもその翌日にも、彼らには試合が組まれていたのだ。

 毎日朝練習に参加するためには、5時半に起きる必要がある。ところが夜のミーティングは22時から始まる。当然授業中に選手たちは睡魔に襲われるが、むしろ一部の教師たちは、彼らに同情していた。

「キミたちの練習が半端ではないことはわかっている。少しなら寝てもいいよ」

 1年時にレギュラーでプレーしていたAは、故障をして治療に行くと精神力がないと烙印を押され、やがて一切試合に使われなくなった。激務にもかかわらず、昼食は焼きそばパン1個で済ませることもあり、睡眠も栄養も不足して身体は疲労を溜め込んでいく。ところが合宿になると、一変して大量の食事を無理強いされるので、ひどい胃炎に悩まされた。Aは、後に父に感謝をしている。

「いろいろ寮に送ってもらったけれど、胃薬が一番助かったよ」

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