ぶかぶかのユニフォームを着ていたジュニーニョ
相手のACミランを率いるのはファビオ・カペッロだった。フランコ・バレージを始め、マルディーニ、コスタクルタ、デサイー、ドナドニ、マッサーロ、パパンと欧州各国代表選手が揃っていた。どんな試合になるのだろうとわくわくした思いで報道関係席に座っていたことを思い出す。
サンパウロのサッカーはいわゆるブラジルのサッカーとは印象が違っていた。ワンタッチ、ツータッチで素早くボールを繋ぎ、ピッチ全面を広く使った。ブラジル人の技術と洗練された戦術が上手く合わさったチームだった。
前半サンパウロはパリーニャの得点で先制した。後半に入ってもサンパウロは押し気味に試合を進めたが、オフサイドラインの押し上げの隙をついたマッサーロが同点にすると試合の流れが変わった。
イタリアのクラブらしい、隙をついたしぶとい得点だった。以降、セレーゾたちはこれまでのように中盤で試合を作れなくなった。
膠着した試合の流れを変えるために、テレがジュニーニョにウォーミングアップを命じた。その途端、左からのクロスボールをセレーゾが決めて1点を勝ち越した。
そして、後半19分、背番号15番をつけたジュニーニョがパリーニャに変わってピッチに入った――。
あの時のジュニーニョの姿は鮮烈だった。ユニフォームはぶかぶか、子どもが大人のユニフォームを着ているかのようだった。
「あの大きなユニフォームはテレ・マジックの一つだったの? あなたの身体をより小さく見せようとしたのかな」
ぼくの問いにジュニーニョは声を挙げて笑った。
「全く違うよ。それどころか、ぼくはえらく怒っていたんだ。通常、ぼくはブラジルではPのサイズ(日本表記ではS)のユニフォームを着ていた。しかし、トヨタカップでは別のユニフォームが準備されていた。それが何の手違いか、チーム全員Gサイズ(日本表記L)だったんだ」