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ブラジルW杯唯一の初出場、ボスニア。祖国を窮地から救ったオシムはベテランの復帰を提言

text by 長束恭行 photo by Yasuyuki Nagatsuka

問題解決に一肌脱いだオシム

「跳ねない奴はボスニアが嫌いな奴だ! ヘイヘイヘイ!」

ブラジルW杯唯一の初出場、ボスニア。祖国を窮地から救ったオシムはベテランの復帰を提言
屋台骨を支える多くの選手は移民や難民として両親に国外に連れられ育った、いわゆる「二世組」だ

 三民族の主義主張が異なる以上、こうして今のボスニア代表を応援しているのは、もっぱらムスリム人だ。ボスニア代表が蔑ろにされていた事実として、同国出身のセルビア人はセルビア代表を、クロアチア人はクロアチア代表を悩むことなく選択してきた。現ボスニア代表にはセルビア人やクロアチア人も存在するが、やはり大半を占めるのがムスリム人である。

 また、サッカー協会も三民族の足並みが揃うことなく、利権をむさぼる一部の人間にとって不正の温床になっていた。2011年にFIFAとUEFAが「会長三人制が規定に反する」として、国際大会からボスニアの締め出しを決定。

 これら問題を解決できる唯一の「レジェンド」としてイヴィツァ・オシムが一肌脱ぎ、正常化委員会の座長として祖国を窮地から救ったことは、読者の皆さんもきっと耳にしただろう。

 ここ数年はビッグトーナメント出場まで後一歩だったボスニア。今予選はグループに恵まれたこともあり、ようやく念願のW杯出場を手中に収めた。チームには味わい深い「いぶし銀」が多く、とりわけ攻撃陣には爆発力あるタレントが揃っている。

「ボスニアのダイヤモンド」ことFWエディン・ジェコ(マンチェスター・シティ)は生粋のサラエボっ子だが、屋台骨を支える多くの選手は移民や難民として両親に国外に連れられ育った、いわゆる「二世組」だ。

 今年夏にはドイツ育ちのDFエルミン・ビチャクチッチ(ブラウンシュバイク)、スイス生れのMFイゼト・ハイロヴィッチ(グラスホッパー)がボスニア国籍を取得し、予選終盤にそれぞれチームに貢献。11月のアルゼンチンとの親善試合では、ドイツのユース代表にも名を連ねたDFセアド・コラシナツ(シャルケ)が待望のボスニア代表デビューを果たした。

 国内リーグのレベルは高くなく、育成に必要なインフラも戦争の余波でお粗末なもの。それだけにサフェト・スシッチ監督は、チーム強化に直接繋がるようなボスニア移民の逸材を発掘し続ける必要がある。

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