今では国民から溺愛される存在になったメッシ
「アルゼンチン代表の新しいキャプテンはメッシ」。2011年8月、予選開始のわずか2ヵ月前に代表の新監督に就任したアレハンドロ・サベーラは、いきなり大胆な決断を下して世間を驚かせた。
前年のワールドカップに続いて同年6~7月に開催されたコパ・アメリカでも不発に終わり、母国でますます非難の的となるばかりだったリオネル・メッシをキャプテンに任命したからだ。
内向的で無口な上、代表不振の責任を負わされていたメッシをあえてチームのリーダーにするというアイデアには、アルゼンチン国内のメディアのみならず、スペインではバルセロナの番記者までもが懐疑的な見方を示した。
ところがどうだろう。キャプテン章をつけたメッシは文字通り代表の「主」となってチームを引っ張り、ゴールを量産。コパ・アメリカまでは母国のサポーターから残酷なブーイングを浴びていたのが、1年半後には国民から溺愛される英雄に変身したのである。
だが予選の序盤では、早速つまずいた。第1節のチリ戦でメッシが代表における2年半ぶりの得点を決め、「キャプテン章から元気をもらったおかげ」と語り、幸先の良いスタートを切ったと思われたのも束の間、続くベネズエラ戦ではまさかの敗戦。
第3節ではホームで格下のボリビアと1-1のドローの終わり、アルゼンチンサッカー協会の内部では早くもサベーラ監督解任説が浮上した。
転機となったのは第4節、アウェーのコロンビア戦だ。先制点を許してしまったアルゼンチンは、後半からメッシがセルヒオ・アグエロの登場と同時に猛反撃を開始。同点ゴールを決め、その後も相手のミスを逃さず速攻の起点となり、ゴール前での突破からアグエロによる逆転ゴールを生み出した。まさにメッシがチームの先頭に立ってものにした、貴重な勝利だった。