フォーメーションの近年の歴史
フォーメーションとは試合展開の効率を追求した結果だと言える。小学生がサッカーの授業でそうするように、ひとつのボールに20人が寄り集まってもプレーはできるが、ピッチ上に分散したほうがより速やかにボールを動かし、あるいは危険地帯に赴くことができる。試行錯誤の末、現在残るフォーメーションは先達がその有用性を実証済みのものばかりだ。
フォーメーションの過去の歴史においては、ルールの改定によってその存在が退場したものもある。2-3-5のピラミッドシステムだ。これは5トップのうちふたりはインナー、つまり二列目で、純粋なフォワードは両ウイングとセンターの3人となる(実質2-3-2-3)。
これを2バックで守っていたのは、現代よりも一列手前の相手チーム最後尾から3人目の選手がオフサイドラインになっていたからだ。「最後尾」ゴールキーパーの前に位置する「2人目」のディフェンダーは、「3人目」のディフェンダーが立つオフサイドラインのウラに抜けてきた相手フォワードかボールをマークするだけでよい。しかも2バックのうちひとりが前に出れば、相手はかんたんにオフサイドになる。
言い方を変えると、3人目がオフサイドという当時のルールが、フォーメーションのディフェンスの数的不利を補っていたのだ。
ところが1925年にオフサイドルールが現在と同様に改められると、オフサイドラインでひとりがストッパーとして阻み、残るひとりがスイーパーとして待ち構えてカバーする守り方は危険になった。旧オフサイドルールが守ってくれない2対3として考えれば、2バックは守備側の数的不利でしかない。
そこで2-3-5の「3」からセンターハーフをディフェンスラインに下げ、3バックにした3-2-2-3、いわゆるWMシステムが、新たな主流として定着することになる。
このように選手の配置と戦い方には密接な関係がある。だから選手は「列(なら)び」と呼んでフォーメーションを気にする。
1936年ベルリンオリンピックの日本代表は、大会直前に欧州入りしたのち、2バックから3バックへと急遽フォーメーションを変更したが、これも当時のセンターハーフが長身で守備的な選手だったからできたことである。選手の特徴と配置。フォーメーションと戦術が密接に関連しているからこそ、監督はホワイトボードを見つめ、常に頭を悩ませているのだ。