幻のようだったカタールでのサッカー
この次はいったい何をしかけてくるのか。
楽しみでもあるが、そもそもサッカークラブは、こんなにピッチ外で売り込みをするものだったか? という疑問もわいてくる。先にも挙げたバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドなどは、ピッチ上のパフォーマンスで、人気を積み上げてきたことだろう。
PSGの場合は、十分な結果が伴う前に名前だけアピールしている形だが、こうした宣伝攻勢をかけているのは、やはりフランス、とくにパリが、サッカー人気が希薄な土地柄だからなのか。それとも、親元カタールのお国柄か。
何年か前に、カタールでサッカーを観た。
ドーハ郊外のスタジアムでのトリプルヘッダーで、バティストゥータ、フランク・ルブフ、グァルディオラ、エッフェンベルグ等を一度に堪能し、息子を連れて応援に来ていたイエロにも遭遇した。
夜中1時すぎ、帰る道すがらふと後ろを振り返ると、砂漠のど真ん中で煌煌と光るスタジアムが異次元の物体のような異様な雰囲気を醸し出し、自分が観てきたものがすべて幻だったような錯覚に陥った。
今のPSGをみていると、ふとそのときの感触が蘇る。いつかこの輝きが砂塵に埋もれるのではないか、という危うい予感。
それとも案外、今、産声を上げた子供がサッカーキッズになる頃には、「世界で一番ビッグなクラブ? PSGに決まっているじゃないか」という時代になっていたりして……。
少なくとも自国でW杯を開催する2022年までは、カタールのサッカー信仰は続くのだろうから、それがないわけではないのだ。
【了】