指揮官が強調「もっとタテに」
2010年南アフリカW杯アジア予選では不動の右サイドバックに君臨しながら、本大会は一度もピッチに立てないという屈辱を味わった内田篤人。南アでの悔しさを胸に秘め、ドイツで新たな挑戦をスタートさせた彼にとって、ザックジャパンでの成功はクリアすべきハードルだったはずだ。
そのためにも、新チーム初戦となった2010年10月のアルゼンチン戦・韓国戦2連戦では、シャルケで急成長した姿を見せたいと考えていたに違いない。
だが、内田はクラブで左足小指を骨折。ケガを抱えながら新指揮官との初仕事にのぞまないといけなかった。「自分が見ても分かるくらい指が折れてた。腫れが引かないし、まだくっついてないから痛いけど、向こうでは試合も出てるし、我慢するだけ」と歯を食い絞って埼玉合宿に挑んだ。
アウトゥオリ、オリヴェイラ、マガトと何人もの外国人指揮官のもとでプレーしてきた内田だけに、ザッケローニ監督の指導にも戸惑うことはなかった。ただ、2〜3日練習してみて、攻撃面でタテへ行く意識の強さは特に印象に残ったようだ。
「紅白戦やったんだけど、『パス回しは世界トップレベルだけどシュートを全然打たない』って言われたんですよ。シュートが枠に行ったのが1本くらいだったんで、そういうところがちょっと…という話があった。もっとボールをタテにっていう指示ですね。
ゴールに直結する形というか、パスは少なくていいと。やっぱりサッカーは点を取る、守ることが原点だから。新しいチームが始まったばかりなんで、基本的なことを言っているんだろうけど、それは大事なことだと思います」と内田は振り返る。より結果を問われるドイツの厳しい環境に身を投じたからこそ、イタリア人監督の意図を深く汲み取ったのかもしれない。