クラブ内部の不協和音
本田圭佑が伝統あるクラブの「10」を背負うことに、クラブの内部や周辺にいる関係者は押しなべて好意的である。合流する前から批判的な声を上げるわけにもいかないのだろうが、それにしても、「本田は成功する」との見方は多い。
ただ、その評価がどう変わっていくかは本人のパフォーマンス次第である。中田英寿しかり、中村俊輔しかり、そのほか多くの日本人がこれまでイタリアに渡り、栄光と挫折の瞬間を味わってきた。だが今回、この日本代表エースがイタリアに渡るにあたり、一つの懸念材料がある。ミランの内部の不協和音である。
世界で最も多くのタイトルを手にしてきたビッグクラブを近年、支えてきたのはアドリアーノ・ガッリアーニ副会長だ。同氏は1986年からミランでの挑戦を始め、アリゴ・サッキやオランダ人選手らによるスペクタクルなサッカーを実現させた。ファン・バステンやフランク・ライカールは彼が手がけた移籍の中でもトップ10に入るだろう。
そのほか、アンドレア・ピルロの発掘を始め、サヴィチェビッチ、ジョージ・ウェア、シェフチェンコ、イブラヒモビッチ、カカ、ロナウジーニョら多くの選手たちをミランの一員とし、スター選手として輝かせてきた。まさに黄金時代を築いてきた功労者と言える。
だが、今季のミランにその栄光の面影はない。勝ち点は伸び悩み、来季のCL出場圏どころか、降格圏に近いポジションにつける時期さえある。この間、徐々に聞こえてきたのがクラブ内部の不協和音だ。
11月3日付の一般紙「ラ・スタンパ」は「管理職を交代させる戦い」というセンセーショナルな見出しをつけ、その内部抗争を書き立てた。その主役がガッリアーニ氏とシルヴィオ・ベルルスコー二名誉会長の娘であるバルバラ氏だった。