「正直、サッカー選手にあんまり年齢は関係ない」
「『タテに速くなった』という声も多かったけど、ザックさんは攻撃のことはそんなに指示はしなかった。試合前も『今までやってきたことは頭の片隅に覚えといてくれ。これは規則じゃない。自分たちの持ってるものを最大限出してくれ』という話でした。
物事を押し付けない『懐の深さ』が感じられた。今はまだ方向性を探ってる段階でしょうけど」と、松井は戦術を重視しつつも選手の持ち味を大事にする指揮官の考え方に賛同していた。
2010年10月2連戦では遠藤保仁に曽ヶ端準、中村憲剛、田中マルクス闘莉王、阿部勇樹、前田遼一、駒野友一、松井と30歳前後の選手がチームの3分の1を占めていたが、就任直後に「世代交代の必要性」を強調したザック監督がここからどうベテランを扱っていくのかも大いに気になるところだった。
松井は「チームはバランスだし、南アでも中堅、若手、ベテランが一体となって戦ったのがよかった。自分が必要とされるなら本当に頑張っていきたい。正直、サッカー選手にあんまり年齢は関係ない。いい選手は35でもやってるから」と力を込めて語っていたが、年長者が生き残るのは非常に難しい。
彼自身も現実の厳しさを2011年1月のアジアカップで味わうことになった。大会中に怪我でチームを離脱、その後、松井が代表に招集されることはなかった。クラブでも不遇が続く。
グルノーブルが経営難となり、ディジョンへ移籍するも出場機会に恵まれず翌年にはブルガリアのスラヴィア・ソフィアへ。そこでも目立った活躍ができずポーランド、レヒア・グダニスクに移籍する。
そして現在はジュビロ磐田への加入が決定的との報道もある。決まれば約10年ぶりの日本復帰。かつて「ル・マンの太陽」と呼ばれ、フランスで旋風を巻き起こした天才MFは、再び輝きを放つことができるのか。
「いい選手は35でもやってる」とかつて彼は語った。現在32歳。遥か遠くかもしれないが、視線の先にはブラジルが見えているはずだ。
【了】
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