まとめ役としての人格が備わっている長谷部
遠藤はベルギー戦でもベンチスタートとなり、オランダ戦に続いて後半からピッチに立つと、いつも以上のアグレッシブさで攻撃に絡み続けた。遅まきながらチーム内で作動した競争原理が選手たちの目の色を変えさせ、攻守両面で素晴らしいプレーを引き出す要因となったことは想像に難くない。
特にボール奪取能力と運動量の両面で、2試合を通じて群を抜く存在感を示したボランチの山口螢(セレッソ大阪)は、岡田前監督時代の2008年5月のコートジボワール代表戦から固定されてきた遠藤と長谷部誠(ニュルンベルク)のコンビに間違いなく風穴を空けるだろう。
相手のパスをインターセプトできる読みの鋭さも搭載しているだけに、ダブルボランチの一角を奪い取っても決して不思議ではない。その場合は守備を不得手とする遠藤と組ませることで、遠藤の攻撃力、パス配球力をより生かせる相乗効果を生み出すはずだ。
ベンチから試合を見る長谷部の姿に違和感を覚える人は少なくないかもしれないが、公平な競争を経た上でサブに回るのであれば、長谷部も納得するだろう。選手である以上は悔しさも募らせるはずだが、複雑な思いを封印してチームの後方支援に徹する人格も備わっている。
来年1月で30歳になる。日本代表のキャプテンを拝命してすでに3年半。かつて中山や秋田、川口が担ってきた役割を演じられるのに、現状では長谷部以上の適任はいないのではないか。
前回の南アフリカ大会では、直前でレギュラーの座を剥奪され、オランダ代表戦での途中出場のみにとどまった中村が、人前では決して腐る姿を見せなかった。日々の練習に率先かつ意欲的に取り組み、試合に出る選手たちには貴重なアドバイスを送り続けてもいる。
年齢を重ねていく宿命を背負っている以上は、誰でもいつかは世代交代に直面し、スタメンを若手に譲るときが訪れる。川口だけでなく中村の献身的な姿も目の当たりにしている長谷部だけに、自分が同じ立場になったときに何ができるのか、何をすべきなのかは熟知しているはずだ。