香川欠場二つ目の理由
二つ目は、戦術的な理由である可能性が高い。
というのも、アストンヴィラの前線には、クリスティアン・ベンテケや、ガブリエル・アグボンラホールのようなプレミアでもトップレベルの身体能力を持つ選手が複数いる。そのため、カウンターのシーンではロングボール一本で簡単に崩される可能性がある。
もし、ユナイテッドが絶対的なプレッシャー能力があれば、相手のカウンターの芽を潰せるが、現状のユナイテッドにはその能力がない。結果、守備の場面では長距離を走り、戻らなければならない可能性が高い。
また、攻撃でも組み立ての要キャリックが不在のため、普段よりショートパスを繋げず、ロングボール等、縦に速い展開に依存する可能性が高い。
結果、攻守共にある程度、ピッチを上下動し、走り続けなければならない。このような消耗戦に香川を使うのは得策ではない。ただし、攻守共にこの上下動が得意な選手もいる。それがダニー・ウェルベックだ。
この日のユナイテッドは、スピードに乗ったサイド攻略を目指した。手数も人数もかけずに素早くサイドを攻略し、サイドに人数をかけなかった分、ボックス内に多くの人数を飛び込ませ、クロスで仕留めようという作戦だ。
一点目はスローインが起点となり、素早くサイドからラファエルがクロスをあげ、アドナン・ヤヌザイがヘッドで合わせる。ポストに当たってこぼれた球を、ダニー・ウェルベックが反応し、押し込んだ。
二点目は、高い位置でボールを奪うとウェルベックは右サイドにいるバレンシアに展開。そのままボックス内に走り込み、バレンシアからのクロスをゴールに流し込んだ。
二点目のシーン、もしウェルベックではなく、香川が出場していた場合、サイドに展開した後に、ボックス内に侵入して、クロスに追いつくことは出来なかっただろう。これは、ウェルベックのユナイテッド随一ともいえる、トップスピードが活きた形だ。
もちろんウェルベックが香川より全て優れているというわけではない。身体能力では完敗かもしれないが、技術や状況判断に関しては数段上だ。あくまで、これはウェルベックと香川のスタイルの違いというだけだ。
なんにせよ確かなのは、あまりローテーションがうまくないモイーズ監督だが、この日のウェルベックを起用は見事はまった。素晴らしい采配だったと褒めなければならない。