「ここはヴェルディじゃねえんだよ!」
駒澤大は質実剛健をモットーとするサッカーだ。前線へのロングパスが基軸に据えられ、局面で求められるのは強さと堅実性。大木にとって未知なるサッカー観との遭遇は、プレーの幅を広げる意味では有効だったかもしれない。
ボールコントロールにちょっとしたくすぐりを入れただけで「ここはヴェルディじゃねえんだよ!」とコーチから叱り飛ばされ、それを言われるのがいやで仕方なかったが、こだわりを消さないようにしつつ、要求に応えようと努めた。
「ヴェルディユースの頃から技術的なレベルは下のほうで、どちらかといえば不器用なタイプ。全体的に力をつけられた実感がある反面、ヘタになったような気もする。特にポゼッションの感覚はかなり鈍ってますね」
リーグ戦の出場記録は、1年目と2年目はひと桁に留まったが、3年目の後期はレギュラーを確固たるものとしている。
「3年の前期は窮地だったんです。自分とはまったくタイプの違う、身体能力バリバリの1年生が起用されて、ベンチにも入れなかった。もう何をしていいかわからない。パニックでした」