モイーズに足りない存在感。不振の原因か
もちろん、モイーズのそういった態度は、報道陣にとってはありがたい。しかし、常勝クラブを率いる監督としてはどうだろう。ぴりぴりした雰囲気を周囲にまき散らしていたエヴァートン時のように、自分をさらけ出した方が、勝負師としての敬意は得られるのではないだろうか。
しかしそれも、影響力抜群の前監督がディレクターとしてクラブに残り、ことあるごとに試合を観戦しているような状況では難しいことなのかも知れない。
モイーズが良い監督であることは、降格寸前までいったエヴァートンをプレミア中堅以上のクラブに押し上げた手腕を見ても明らかだ。それに加え、マンチェスター・ユナイテッドの戦力は、2位マンチェスター・Cに11点差をつけ、ぶっちぎり優勝を果たした昨季と変わらない。
ならば、12月上旬の時点ですでに5敗を喫し、リーグ9位に甘んじる成績は何が原因なのか。
ここまで読んでいただいた読者ならもうお気づきだと思うが、不振の最大の要因は、モイーズにはまだマンチェスター・ユナイテッドというビッグクラブを鶴の一声で統率する、絶対的な権限と存在感が備わっていないということだ。
選手がモイーズの姿を見ただけでしゃんとする。そんな状況を生み出さなければ、今後、マンチェスター・ユナイテッドが勝ちまくるという状況も生まれない。
しかしそんな存在感は一朝一夕で身に付くものではないだろう。
ファーガソン監督は1986年に就任して6年間も無冠だったが、解任されなかった。それは1967年のリーグ制覇を最後に、マンチェスター・ユナイテッドが優勝から遠ざかっていたからだ。
監督就任時ですでに19年間もリーグ優勝に縁がなかった。しかもファーガソン監督は最後の切り札的存在だった。弱小アバディーンで超2強レンジャーズ、セルティックを抑え、スコットランドを3度も制した上、1983年のUEFAカップウィナーズカップでは決勝でレアル・マドリーを2-1で下して、欧州制覇も達成。この人を解雇しても、それ以上の人材がいなかったという事情はあっただろう。