クラブへの愛は穏やかに育まれることもある
カマタマーレ讃岐の財政事情は決して余裕があるものではないようだ。次の試合の結果が振るわずJ2に上がれなかったとしたら……あるいは無事に上がれたとしても、今後順風満帆で進んでいける保証はない。ぼくが見た限りでは、地元の人に愛されつつあるように見えたが、スタジアムにもっと多くの観衆が詰めかけるまでには、まだまだ時間がかかりそうなのも確かだった。
しかし、少なくともあの日スタジアムに駆けつけた人は、水色のユニフォームを着て大声で応援するサポーターを見たはずだ。また、最後の最後まで戦い続けた木島とカマタマーレ讃岐の選手達を見たはずだ。
「応援するのって楽しそう」とか「木島の迫力は凄かった!」とか少しでも思ってしまった人は、スタジアムの魔力に魅了され始めている。
カマタマーレ讃岐は未熟なチームで、チームに寄せられる愛情も小さく頼りないものなのかもしれない。しかし、この日を境にもっと多くの人たちが、釜玉うどんの名を冠した地元のチームを愛するようになることを願いたい。そう感じながら、柔らかくジューシーな骨付き鶏を賞味した後、再び夜行バスに乗り込み香川県を去った。
【了】