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サッカー番記者はなぜ監督を強く批判できないのか?

text by 海江田哲朗 photo by Asuka Kudo / Football Channel

ヴェルディの危機。残る無力感

サッカー番記者はなぜ監督を強く批判できないのか?
東京Vは多くの人々の助けを借り、存続の道筋をつけた【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】

 批判することで、何かが変わったか? 経営陣が殊勝な態度で思い直したか? 良かれと思って書いたことが、クラブの発展に寄与したか? 

 09年から2010年にかけて、東京Vはどうなった。経営危機に揺れ、事実上の倒産に追い込まれてしまったじゃないか。

 自分の仕事がその方面に影響力を発揮したとはこれっぽっちも思わない。だからといって、自分は一切荷担しなかった、正しい側にいたと肯定することもできない。結果、クラブが消滅しかけるという最悪の事態になったのだ。すべて、おじゃんである。

 この事実は、とてつもなく重かった。

 ライターは自分の発した言葉からけっして逃れられない。必ず、自らに跳ね返ってくると考える生きものだ。どうにもならない無力感だけが残った。

 幸い、東京Vは多くの人々の助けを借り、存続の道筋をつけた。

 2010年、川勝良一氏が監督に就任。クラブの体力が弱ってくると、今度は監督批判どころではないのである。チーム人件費の大幅カット、環境の劣化など厳しい条件で引き受けてもらい、感謝こそすれ叩く気にはなれない。完全に応援モードである。

 無軌道な放蕩生活から一転、狭いながらも楽しい我が家。フォークシンガー高田渡の『私の青空』の世界だった。

 私にとって、川勝氏との3年間は非常に思い出深いものとなった。特に2010年は近年最高のシーズンと記憶される。選手たちが反骨心溢れる気持ちの入ったプレーを見せ、下馬評の低さを覆して5位に食い込んだ。記者席にいて、何度も心が震えた。

 ライターとしてはありのままに書ける状況は実に気が楽だった。多少過激な表現であっても、相手を信頼しているからどう受け取られようと平気なのである。

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