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サッカー番記者はなぜ監督を強く批判できないのか?

text by 海江田哲朗 photo by Asuka Kudo / Football Channel

難しいライターとクラブとの関係

 ある先輩のライターは、私にこう言った。

「監督や選手とは距離を取りたい。もし日常的に接する関係になろうものなら、試合を観て感じたことをそのまんま書けないよ」

 正直な人である。取材対象との距離の近さを自覚すればこそ、賞賛を抑制したり、ダメ出しに手心を加えてはならないと力みが出る。意識した時点で、何らかの影響は避けられない。

 私は、そのへんの葛藤もあったほうが原稿にコクが出ていいじゃないかと考えるほうだが、余計なバイアスをかけずにサッカーを伝えたい場合は、たしかにその通りだ。

 ひと口に監督批判といっても、ライターとクラブの関係性によって違いが出てくる。特定のクラブに軸足を置き、練習場に出入りするライターは、あの記事は面白かったねと言われたり、気まずい思いをすることもある。クラブオフィシャルの媒体で仕事をしていると、なおのことやりづらさがある。

 また、取材対象のみならず、多方面に波紋が広がるのも引き受けなければならない。

 ひとつの例を挙げよう。02年から、Jリーグには登録フリーランス制度(ライターとフォトグラファーが対象)というものができた。利便性に優れ、それさえあればJリーグ主催の試合取材がフリーパスなのである。

 通常は試合取材の申請用紙に掲載予定媒体を明記するなど、手続きにひと手間かかる。そこで、媒体に所属しないフリーランスの場合、当面露出のアテはないが、継続的に取材し、記事にまとめたいといった希望が通りづらい。それには融通の利く媒体を確保するしかないが、実績の乏しいライターではこれが簡単ではないのだ。

 制度が始まった当初、私は東京Vの推薦を受け、登録フリーランスの認可が下りていた。一部の古株ライターを除き、そうするしか手段がなかった。

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