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バルサは伝統を捨てたのか? 経営面から見る胸スポンサーを導入せざるを得なかった理由

text by 小澤一郎 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ユニフォームに初の胸ロゴ導入、ユニセフとの契約

 当初は人道的なスローガンをスポンサーの名前代わりにユニフォームに載せる案もあったようだが、当時抱える負債のためそのスペースを広告収入源に当てることが必要不可欠であると判断された。ただし、結果的にはバルサの基準を満たすスポンサーが見つからなかったため、商業的な理由でユニフォームの胸のスペースは利用されなかった。

 スポンサー探しの過程では、2005年に中国政府との間で、ユニフォームにBeijing(北京)08」というロゴを入れる契約交渉が締結直前まで進んだ。

 そのロゴは2008年に迫った北京オリンピックを意味しているため、クラブ理念からは大きく外れず、またこの契約がまとまれば年間2000万ユーロ(約27億円)ものスポンサー収入が入ることになっていた。

 さらに、バルサが後々に巨大市場である中国へと進出する際の手助けになる期待もあったのだが、バルサ側から契約についての情報が漏れたこともあり結果的に契約締結には到らなかった。2006年にはオンライン・ベッティングの企業から高額なオファーがあったものの、それはクラブ理念と合わないとの理由で交渉決裂。

 そんな中、当時のディレクターである、エバリスト・ムルトラが「児童救済にあててはどうか」と提案したことをきっかけに、ユニセフの名が浮上した。そして、最終的にはバルサ側がユニセフに年間150万ユーロ(約2億円)を寄付するという形でバルサのユニフォームの胸に「Unicef(ユニセフ)」のロゴがプリントされることになった。

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