侮蔑的な発言に激怒したビラス・ボアス
1991年から10年間に渡って北ロンドンの名門クラブを所有した大富豪は、BBCラジオ5のインタビューに応じ、「全くもってビラス・ボアスの戦略は理解不能だ。あれでどうやってゴールを奪えるんだ? 今私が熱望しているのは、暇をもてあましている友人のサー・アレックスが、トッテナムで監督業に復帰してくれることだ」と語った。
前監督のハリー・レッドナップも、ビラス・ボアスが自分の後任としてトッテナム監督に就任した際、「選手が彼の複雑な戦略を理解できるか心配だ」と発言したが、理論派で知られる36歳の外国人青年監督に対し、情熱を第一と考えるイングランドのサッカー人はこういうことを言いたがる。ようは「理屈ばかりで選手を掌握していない」と指摘したいのだろう。
これにはビラス・ボアスも激怒した。それはマンチェスター・ユナイテッド相手に優勢に試合を進め、2-2ドローで終えた試合直後会見の発言でも明らかだった。
「2~3の人間が、私の人格、人間としての価値、そしてプロ意識を侮辱する発言をしていた。こうした人格を傷つける攻撃は、私に対する敬意の欠如でもある」
この激烈なポルトガル人青年監督のコメントを読めば一目瞭然だが、この試合に臨むビラス・ボアスの意気込みは、それこそ生命を賭けるに等しい思いがあっただろう。
誇りを傷つけられた男の、目もくらむような怒りと、FCポルトで2010-11年シーズンに記録した4冠の栄光の記憶、そしてチェルシーを追われた強烈な屈辱も蘇り、ビラス・ボアスはマンチェスター・ユナイテッドに立ち向かった。
これは、週中の欧州CL戦で現在のブンデスで2位のレバークーゼンを、記録的な5-0で下したマンチェスター・ユナイテッドにとっては迷惑な話だった。6-0負けで意気消沈してくれればいいものを、ビラス・ボアスは手負いの猛獣のような形相で向かってきた。