タレントが揃っていたコリンチャンスとの一戦
サントス対コリンチャンスは、ブラジルでも最も人気のあるクラシコの一つである。両クラブとも白と黒をチームカラーとしているため、「アルビネグロ(白黒)クラシコと呼ばれることもある。
試合前、先発する選手たちが集まって神に祈りを捧げた。言葉が分からない菅原は黙って輪に加わって下を向いていた。モルンビースタジアムの細い通路を光の方向に向かって歩いて行くと、次第にざわめきが大きくなり、空が見えてきた――。
相手のコリンチャンスはサンパウロ州選手権で優勝候補だった。
キーパーのマウリシオ、ディフェンスにインジオ、パラグアイ代表のガマーラ、ネネ、シウビーニョ、中盤に元コロンビア代表のリンコン、ブラジル代表にも選ばれていたバンペータ、右利きの天才マルセリーニョ・カリオカ、ヒカルジーニョ、そして前線にエジウソン――。
ヒカルジーニョは2002年W杯優勝メンバー、エジウソンは柏レイソルに所属した俊足のフォワード、監督は後に鹿島アントラーズを率いるオズワルド・ジ・オリベイラである。
サントスの先発は、元セレソンキーパーのゼッチ、アンデルソン、アルジェウ、クラウジオミーリョ、グスタボ・ネリ、中盤に菅原、ナルシーゾ、ジョルジーニョ、カイコ。フォワードはアレッサンドロとビオラの二人。
グスタボ・ネリは後にドイツのベルダー・ブレーメンに移籍した。ロベルトカルロスがいたため、セレソンに定着はしなかったが、才能溢れる左サイドバックの選手だった。アレッサンドロはジュビロ磐田でプレーすることになる。ビオラは94年W杯優勝メンバーの一人だ。サントスも錚々たる選手が揃っていた。
試合はアレッサンドロが先制して始まった。
しかし――。この試合は菅原にとって苦い思い出となってしまう。
【次週に続く】