突然の出場チャンス
1999年1月から菅原智はサントスFCに移籍していたが、就労ビザ取得に時間がかかっていた。試合出場に必要なビザが取得できたのは、サンパウロ州選手権の第二ステージ終盤となっていた。
第二ステージは12チームを二つのグループに分け、それぞれ上位二チームが準決勝に進出。サントスはすでに準決勝進出がほぼ確実となっていた。
5月16日、サントスは本拠地のビラ・ベルミーリョでモジミリンと対戦した。昼12時から始まった試合は。暑さのせいか、緩んだ試合内容だった。
「スガ、用意したほうがいいぞ。こんなんじゃ出番が来るから」
ベンチで隣に座っていたビクトル・アルスチザバルが冗談を飛ばした。アルスチザバルはメデジン出身のコロンビア人フォワードだった。コロンビア代表にも選ばれている。
「ない、ない」。菅原は笑顔で返した。
すると前半終了間際、監督のレオンが菅原を呼んだ。「後半、頭から行くぞ。上げておけ」
菅原は急いで更衣室に下がり、片隅で急いで身体を温めた。足元がふわふわしていた。地に足がつかないというのはこういう感じなのか。Jリーグには何試合も出ていたが、こうした感覚になったのは初めてだった。
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