「エジルの控えを探していた」(モウリーニョ)
モウリーニョに限らず、監督なら誰でも、他チームの指揮官が自分の手駒の選手について話すことを嫌う。ビッグクラブの監督からのラブコールならなおさらだ。
自分がされて嫌なことをどうしてできよう。さらに言えば、ポルトガル人闘将は今夏、ルーニー獲得を狙った。たとえマドリー時代のことであれ、またひとり、香川というユナイテッド所属選手について言及するのは気が引けることだろう。
しかしモウリーニョは話してくれた。「レアル・マドリーはもう終わったこと。私は終わったクラブで何が起こったかという話はしない」と口を開いたにも関わらず、香川真司について語った。
「エジルの控えを探していたんだ。しかし、控えといってもマドリーだ、いい選手を探した。マドリーはだめな選手は穫らない。香川には正直にエジルの控えだと伝えた。選手は本当の話を聞いて、将来を判断すべきだ。そして香川は毎週プレーをすることを選び、マドリーに来ることはなかった」
なるほど。これで納得できた。香川のスペインサッカーに対する憧れは、半ば公然の秘密だ。確かに、日本代表MFの憧れの対象はレアル・マドリーではく、バルセロナということも知られている。しかし、イングランドとスペインという選択ならマドリー移籍もあっただろう。ところが香川はユナイテッドを選んだ。
けれどもモウリーニョのオファーが「控え」だったということなら合点がいく。その一方で、ファーガソン前監督が香川に“ファーストチョイス=不動の先発レギュラー”を約束していたことも、「(香川が)毎週プレーをすることを選んだ」という発言からはっきりした。
たぶん、モウリーニョが香川をレアルに誘った時点ではそうだったのだろう。ところがチーム内に思わぬ難敵が現れた。ロビン・ファン・ペルシーである。
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