「クラブが非営利法人を持っていれば話が変わってくる」
――育成・普及を非営利法人にすると具体的にどんなメリットがあるのでしょう。
「一つは地域との距離が縮まるということ。特に自治体との距離ですね。今までは『トヨタのチームでしょう?』『パナソニックのチームでしょう?』と言われては行政がなかなか協力してくれないケースが多かった。行政からすれば一企業に協力するにはどうしても大義名分が必要だからです。
たとえば、日本のプロスポーツの特徴は、自治体のスタジアムが使えないと成り立たない側面がある。Jクラブでも自前のスタジアムを持っているのは磐田と柏だけ。残りのクラブは自治体の協力がないと試合ができないわけですが、自治体からすれば『プロの興行なんでしょう?』『では使用料は200万円ですね』というケースがいくらでもあるんです。
でも、ここでクラブが非営利法人を持っていれば話が変わってくる。試合の主催者を育成・普及の非営利法人にしてしまえばいいわけです。非営利法人がスタジアムを借りて、試合の前後にサッカー教室などを開催する。
そしてその一日のなかにトップチームの2時間の試合を組み込む。非営利法人が主催者であり、そこのトップチームが今日のプレークラブだよ、というふうにすればいい。そして、試合で子どもの目を肥やしてあげて、みんなでサッカーを観戦して応援するためのコミュニティを作る、という一事業として考えるわけです。
トップチームの単なる興行ではなくて、子どもの将来のため、さらには、街全体が幸せになりますよ、という大義名分があれば、自治体はスタジアムを安く貸し出すことができる。使用料も10分の1程度に減額することは可能になると思います」
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