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城福浩~父の背中が語るもの~

text by いとうやまね photo by Kenzaburo Matsuoka , junior soccer editorial staff

「城福のオヤジが来ている」

 噂は、瞬く間に広まる。珍しい苗字も手伝って、もう逃れようもない。わざわざ見に来る生徒も出てくる始末だ。後で知ったことだが、息子は何かにつけて、周囲に言われたらしい。

「オヤジがサッカー関係で、お前はその程度なのか」
「ダメだな」

 やがて、サッカー部から足が遠のいた。息子はボールを見るのすら嫌になり、高校に上がると同時に、サッカーそのものを辞めてしまった。

 その頃、城福はU17日本代表の監督に就任していた。U17代表には、全国から生意気盛りが集まってくる。

各地でナンバーワンを誇る兵だが、普通の子どもと一緒と気づかさせてくれたのは…

 彼らは、各地でナンバーワンを誇る兵だ。あらゆる面でエネルギッシュで、規律を守る優等生ばかりではない。反抗期だし、お山の大将だ。彼らの行動については、だいたい察しがついていた。

 なぜなら、自分の息子と同世代だったからだ。

 気がつけば、息子をものさしに、許容のほどを決めていたという。合宿では、スリッパがすっ飛んでようが、消灯後に騒いでいようが、多少、大目に見た。コンビニも、夜中のアイスクリームも、解禁した。その代わり、練習中にいい加減なことをすれば、そのままピッチの外に出した。

「選手は、たまたまサッカーはうまいけれど、人間的には、普通の子どもと一緒なんです」

 普通の子どもと一緒。

 息子がいなければ、おそらく彼らの振る舞いに、いちいちカッとなっていたに違いない。寛容になれたのは、普段息子を見慣れているからだ。指導者としての自身の成長に、息子の存在が不可欠だったことに、改めて気づかされたのだった。

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