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ポゼッション低下は哲学と真逆? 若手起用は? 無敗バルサを牽引するマルティノ監督の正体とは?

text by 山本美智子 photo by Rafa Huerta

勝利へのこだわり

 そのプレースタイルにおいては、ゴールキーパーからのボール出しによる攻撃参加、前線からのプレス、高いディフェンスラインなど、リスクがあがっても攻撃的な姿勢を崩さないバルサがここ数年、貫いてきたスタイルと酷似している。

 トップチームの選手も口を揃えて、「タタの哲学はバルサと同じだ。全く変わっていない」と話すが、「バリエーションが加わっただけで」とも付け加える。マルティノは、基本ラインで攻撃的だが、勝つためにディフェンシブに布陣を変えなければいけないと判断したら、守備的にプレーすることも厭わない。

 タタは「勝つことは、信念に留めを刺すために絶対的に必要」だと考えている。バルサは「ただ勝つだけでなく、魅力的に勝たなければならない」と理解しているが、試合に勝つために「ディフェンダーを投入すべきだと思えば、ディフェンダーを入れるし、何度でもそれを繰り返す」と自らの信念を曲げるつもりはない。

 ヨハン・クライフ以降のバルサの哲学は、多少乱暴な言い方をすれば4点決められても5点入れて勝てばいい、というものだったが、タタの到来と共にそれは終焉を迎えつつある。失点は少ないにこしたことはないのだ。

 華やかさの目減りした現在のバルサのプレースタイルに、誰もが満足しているわけではない。だが、タタ・マルティノが言うように「勝たないチームを記憶する人々はいない」のだ。

【了】

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